窓の外の風景は、ほとんど真っ暗闇だ。
なにしろ、ナイル河沿いであっても、ある程度人が住む町と言うのは、点在状態。ある意味、オアシスのような感じなのだ。

カイロやアレクサンドリアを除けば、町の規模は小さい。高層ビルもほとんどないし、街灯やネオンなどが煌々とともる風景もない。そもそも、アラブの国では、外に面した広い窓から家の中の明かりがもれているといった作りでもない。

なので夜の車窓の風景は・・・あれかな。

銀河鉄道の夜。

それはそれで、ちょっとメランコリックな感じになる。

なんて、久しぶりのビールを瓶のまま飲みながらぼーっとひたっていると、車掌さんが扉をノックし、にこやかに入ってくる。

ちなみに、とってもにこやかで愛想がいいのは、最初に渡したチップの効果でもあるだろう。ま、だからって特別何かいいサービスがあるわけでもないのだが、ホスピタリティ120%くらい発している。

「ベッドを作ろう。上としたどっちがいい?」
「上がいいな」
「よし。じゃちょっと待ってなさい」

と、座席上部の壁にある取っ手をがたっと引き出すと、瞬時にベッドができあがった。布団も毛布も既にセット済みだ。

入り口上部にひっかけてあった梯子を取り出して、窓側に取り付ける。その間、わずか数十秒だったろう。

ちょっと感動してしまった。

「あと何か欲しいものとかあるか?」
「いや、もう大丈夫。ショクラン」
「アフワン」
「テスバハラ・ヘイル」
「テスバハラ・ヘイル」

おやすみの挨拶はしたものの、すぐに寝ちゃうのはつまらない。しばらく窓側に頭を向け、暗い地平線を見ながらぼーっとする。

時折、数件の家の明かりが見える。
自分が生まれ育った下総も、駅と駅の間の風景はこんな感じのところがある。あそこは水田だったけど、エジプトはさとうきび畑。似てるような似てないような・・・ZZzzz。


●拡大写真


▲ブログTOPに戻る